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[綾辻行人] Another
内容紹介
とある田舎の中学校には、噂によると「善意」から生まれた呪いがある。転校してきたばかりの主人公の少年がクラスの雰囲気に違和感を覚えつつ、クラスに集団無視された幽霊のような少女に惹かれ、その呪いを解明しようと試みた。そんな中、クラス委員長が凄惨な急死を遂げたきっかけで、クラスに事故死が続々と起こってまった。恐怖に陥り、避けられない惨劇を自分の身に降りかからないように藁をも縋るクラスの全員は。どんな結末を迎えるだろう。
感想
第10回本格ミステリ大賞の最終候補作、新本格派ミステリ作家の綾辻行人による小説作品。異色な学園生活を中心とする設定が、これまでの作品と一線を画し、若者にとっても入り込みやすい。
ホラーとミステリが絶妙に組み合わされたおかげで、読者は少し背筋が涼しくなる良質なホラーを味わいながら、主人公たちの行方と呪いの仕組みについての推理が楽しめる。しかし、外の世界と隔離された田舎の町、その中に漂う不穏な空気、そして謎の連続死――何れも小野不由美の『屍鬼』を想起せずにいられない。全体的な出来栄えは『屍鬼』に劣るかもしれないが、読みやすくてより万人向きのように思われる。
この作品の最大の問題点は推理物語としてのプロットだろう。新本格派の旗手として名が轟いている綾辻氏による久しぶりの新作だから、読者は本格ミステリの展開を待ち望んでいるに違いない。実際に序盤の構成にも推理小説の要素が詰まっており、読者の私も自然に何らかの論理的な解決なり帰結があるのではと期待していた。ただ読み進むにつれ、急に超常現象的な展開が登場し、話の土台にあたる設定が如何にも無理矢理だということが明らかになった。終盤の展開が予想の斜め上を行くのに、私は中盤からもうすっかり推理を諦めた気分になり、どんな結末も驚くことはなかった。結局理屈で片付けられない現象が謎のまま終わってしまい、割り切れない感が最後まで残った。
もうひとつの問題点は、説明が過剰な一方、殆どの登場人物の掘り下げが中途半端だ。参考書ではないので、説明文ごとき対話で物語を延々と述べるより、登場人物の興味深い演出で読者を物語の世界へ引っ張ってほしい。ただ主人公の少女の描写が秀逸で評価したい。不思議なオーラを放ち、クラスにおける妙な立ち位置と相まり、どうやら彼女は人間か幽霊かさえも最初に分からなかった。後に彼女の正体が判明したにもかかわらず、数多くの登場人物のうち依然として最も魅力的に見える。
この物語に推理の要素を求めれば失望になるかもしれないが、学園をテーマとする怪談話としてかなり楽しめると思う。漫画をはじめ、テレビアニメ・実写映画など多角的なメディアミックス展開が順調に行われているので、今の勢いを止めずに続編を出してもらいたい。
とある田舎の中学校には、噂によると「善意」から生まれた呪いがある。転校してきたばかりの主人公の少年がクラスの雰囲気に違和感を覚えつつ、クラスに集団無視された幽霊のような少女に惹かれ、その呪いを解明しようと試みた。そんな中、クラス委員長が凄惨な急死を遂げたきっかけで、クラスに事故死が続々と起こってまった。恐怖に陥り、避けられない惨劇を自分の身に降りかからないように藁をも縋るクラスの全員は。どんな結末を迎えるだろう。
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Another(上) (角川スニーカー文庫) | Another(下) (角川スニーカー文庫) |
感想
第10回本格ミステリ大賞の最終候補作、新本格派ミステリ作家の綾辻行人による小説作品。異色な学園生活を中心とする設定が、これまでの作品と一線を画し、若者にとっても入り込みやすい。
ホラーとミステリが絶妙に組み合わされたおかげで、読者は少し背筋が涼しくなる良質なホラーを味わいながら、主人公たちの行方と呪いの仕組みについての推理が楽しめる。しかし、外の世界と隔離された田舎の町、その中に漂う不穏な空気、そして謎の連続死――何れも小野不由美の『屍鬼』を想起せずにいられない。全体的な出来栄えは『屍鬼』に劣るかもしれないが、読みやすくてより万人向きのように思われる。
この作品の最大の問題点は推理物語としてのプロットだろう。新本格派の旗手として名が轟いている綾辻氏による久しぶりの新作だから、読者は本格ミステリの展開を待ち望んでいるに違いない。実際に序盤の構成にも推理小説の要素が詰まっており、読者の私も自然に何らかの論理的な解決なり帰結があるのではと期待していた。ただ読み進むにつれ、急に超常現象的な展開が登場し、話の土台にあたる設定が如何にも無理矢理だということが明らかになった。終盤の展開が予想の斜め上を行くのに、私は中盤からもうすっかり推理を諦めた気分になり、どんな結末も驚くことはなかった。結局理屈で片付けられない現象が謎のまま終わってしまい、割り切れない感が最後まで残った。
もうひとつの問題点は、説明が過剰な一方、殆どの登場人物の掘り下げが中途半端だ。参考書ではないので、説明文ごとき対話で物語を延々と述べるより、登場人物の興味深い演出で読者を物語の世界へ引っ張ってほしい。ただ主人公の少女の描写が秀逸で評価したい。不思議なオーラを放ち、クラスにおける妙な立ち位置と相まり、どうやら彼女は人間か幽霊かさえも最初に分からなかった。後に彼女の正体が判明したにもかかわらず、数多くの登場人物のうち依然として最も魅力的に見える。
この物語に推理の要素を求めれば失望になるかもしれないが、学園をテーマとする怪談話としてかなり楽しめると思う。漫画をはじめ、テレビアニメ・実写映画など多角的なメディアミックス展開が順調に行われているので、今の勢いを止めずに続編を出してもらいたい。
Another(上) (角川文庫) (2011/11/25) 綾辻 行人 商品詳細を見る | ![]() ![]() | Another(下) (角川文庫) (2011/11/25) 綾辻 行人 商品詳細を見る |